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ヴィンテージファン必見!FRP 製イームズシェルチェア修理の様子(例 03)

イームズ(ハーマンミラー)のアームシェルチェアの修理を請けた際の、実際に行った作業の様子を紹介します。

  • お客様からの依頼
  • FRP 製シェル部分の修理
  • 仕上げ

と進んでいきます。

1)お客様からの依頼

ある日、「アームシェルチェアのショックマウントの部分が割れて穴が空いてしまいました。修理は可能でしょうか?ビニールのカバーがあるタイプです。」と、ホームページの問い合わせフォームから依頼をうけました。

「修理箇所は全部で何箇所ありますか?修理が可能か検討してみますので、折り返しメールで結構ですので、修理したい部分の画像(大きい画像でたくさん送ってもらえると助かります)を送っていただくと、修理可能か判断しまして、折返し見積もり料金など連絡したいと思います。」と返信したところ画像が送られてきました。

お客様のアームシェルチェア

画像を確認すると、古いヴィンテージのアームシェルチェアで、座る部分はビニール製のカバーで覆われています。
そして、脚を固定する部分の 3箇所に穴が開いています。

どうやらこのチェアは、よく見かけるウレタンゴム製の『ショックマウント』を介して脚を止めるタイプではなく、専用の金具を使うタイプのようです。
その金具が FRP製のシェルを突き破って穴が開いたようです。

画像を拝見した結果、「修理は可能」と返事しました。

座る部分に張られたビニール表皮がカンタンに外せれば、修理はカンタンなのですが、ビニール表皮が外せなければ困難なので、その場合の修理方法も考えてのことです。

あと元々の脚を止めている構造がよく分からないので、それも考慮しての返事です。
下記の 3パターンくらいを想定していました。

  • シェルは金具と脚に挟み込まれて固定していた?
  • 金具がシェルに埋め込まれていて、そこに脚を固定していた?
  • 金具がシェルの裏側に接着されていて、そこに脚を固定していた?

どのパターンでも大丈夫なように修理方法を考えました。

修理する場合、壊れている部分の一回り大きいサイズが修理範囲になりますので、貼られているラベルを剥がしたり傷んだりすることがあります。

また、このチェアを作ったハーマンミラー社のとは違った樹脂や接着剤を使用するため、どうしても修理箇所の色・艶は違ってしまいますけどね(調整して極力合うようにしますが)。

2)FRP 製シェル部分の修理

後日、お客様から傷ついたアームシェルチェアが送られてきました。

穴の開いたシェルの状態
穴の開いたシェルの状態
脚を取り付ける金具

確認すると、事前に見せてもらっていた写真の通り、3箇所穴が開いています。
表側から見ると無傷のように見えるのですが。

座る部分にあるビニール製の表皮はカンタンに外せそうにもありませんでした。
外せると完璧に修理できます。
でも、外せれても綺麗に元に戻せるとも限らない雰囲気です。

脚を止めている元々の構造もよく分かりませんでした。
かろうじて止まっている 1箇所も修理された形跡があって、はたしてオリジナルなのか?疑問です。

シェルにボルトの径だけ穴が開いていて、表面側からの金具と裏側から脚がシェルを挟み込んで止まっていたとすると、ビニール製の表皮が外せないため、再現が無理ということで、まずは穴を塞いでオリジナルのスムーズな面を再現することにしました。

そこに後から、脚を止めるための金具を埋め込むか、接着することになります。
どちらになるかは様子を見て判断になります。

まずは穴を塞いで、オリジナルのスムーズな面にする作業に取りかかりました。
穴から表皮が見えてますので、これを汚したりゴミが入り込んだりしないように注意しての作業です。

ポイントなんですが、ビニール製の表皮があって表側からは修理具合が確認できませんし、何も考えずガラス繊維を積層・充填してもオリジナル同様の肉厚になりにくいので、できるだけオリジナルに近くなるように積層方法に工夫もしています。

スムーズな面に仕上げたシェルの状態

この作業後、お客様に修理箇所の色や面の具合を確認してもらいました。

この状態のシェルで、無事な 1箇所を頼りに残りの 3箇所の位置を決めたり、高さの具合を確認して、金具を埋め込んだら良いのか?接着が良いのか?検討しました。

(ちなみにこのチェアの脚を取付けるボルトは、3/8インチの頭でした。)

検討した結果、金具をシェルに埋め込むことにしました。

スムーズに整えた面に、金具にジャストサイズの穴を掘ってから、金具を埋め込んで仕上げる作業です。

4)仕上げ

樹脂が完全硬化しましたら、面がつながるように整形・水研ぎして、修理完了です。
お客様に修理後の画像を確認してもらい、梱包してお届けしました。
これにて修理完了です。

修理の完了したシェルの様子
修理の完了したシェルの様子

今回は最低限の部品のみ送ってもらっての作業でしたので、通常通りの『完成後に座って確認』することができなかったのですが、後日オーナー様から「問題なし」と連絡をいただきました。

いつもは修理作業完了後に、座ってみたりネジってみたりして、チェア自体の傾きや強度を確認しています。

それにしてもこのタイプのチェアは金具が小さいため、シェルとの接着面積が小さいので強度が心配です。
シェルの厚みも現行品より薄いんじゃないかな?

脚の取付に緩みがあるとガタつくのはモチロンですが、それをキッカケにシェルを壊してしまうことが多いのでは?と思いました。

ボルトを締めすぎると、シェルと金具の剥離につながりますし、首下の長いボルトを使うと表側に出てきますし、取扱いには注意が必要なチェアでしたよ。

→ アームシェルチェアの割れ修理とショックマウントの接着(例 01)

→ アームシェルチェアの割れ修理(例 02)

イームズのシェルチェアってヴィンテージものですと、ガラス繊維と樹脂を金型でプレスして作られています。

特殊な作り方をしているシェルチェアの修理は、不可能だと思っている人もいるかもしれませんが、可能なんですよ。

古いものですので割れたりカケたりすると、リペア(修理)に困ると思いますが、当店では承っています。

脚を取付けるショックマウント部分の再接着もしています。

当店はガラス繊維やカーボン繊維、樹脂の取扱には慣れていますし、自動車やレーシングカーなどの FRP パーツの修理経験も豊富ですので、その技術を使って FRP 製チェアの修理しています。

色までは再現できませんが、私が修理したチェアは、今のところ問題なし、クレームなしです。

FRP 製チェアのリペアに困ってましたら、ご相談くださいね。

お仕事の依頼・御相談・質問などありましたら、お気軽にお問い合せください。